60歳からも働く女性が増えています

2026年3月13日 

リビング編集部

シニアも働きやすい社会へと変わりつつある現代。一般的に企業の定年は60歳以上ですが、それ以降も仕事を続けたいかを女性読者にアンケート。実際にオーバー60で働く3人からは、働く理由ややりがいなどを教えてもらいました。

撮影/橋本正樹、山㟢晃治ほか

高年齢者雇用安定法が改正され、希望するすべての従業員が65歳まで働ける環境にすることが企業に義務化されてから、もうすぐ1年が経ちます。今年4月からは在職老齢年金の支給停止基準額が引き上げられるなど(※)、60歳、65歳を超えても働きやすい環境が整えられつつあります。

実際、60歳以上の女性労働者の就業率は年々増加。定年を超えても仕事を続ける、就労意欲のある女性が増えているよう。

本紙の女性読者へのアンケートでも、約80%が「60歳を超えても働きたい」と回答しました。「同じ職場の60歳以上の人が、とても若くて元気だから」といった声も。

そこで今回は、生き生きと働くオーバー60の女性読者3人を取材。それぞれの働く理由や仕事についての考え方を紹介します。

※「在職老齢年金制度」は、企業で働きながら年金を受給する高齢者について、毎月の賃金(ボーナスも含めた年収の12分の1)と厚生年金の月額の合計が基準額の51万円を超えると、超過分の厚生年金の半額が支給停止となる支給調整制度。2026年4月からは基準額が65万円に引き上げられます


59歳以下の女性読者で、「60歳以上も働きたい」人は約80%。その理由でもっとも多かったのは「老後のお金のため」。一方で、「社会と関わりたい」「仕事が好き」「健康のため」といった理由も挙がりました。

郵便事業 窓口接客 飯島智香子さん(61歳)
左)「生活のため、と深刻に働くのは大変。いつも笑っているように心がけています」と飯島さん
右)休日も御朱印集めやライブ、友人とのランチなど積極的に楽しんでいるそう

「こんにちは。お元気にされていましたか」。京都市内の郵便局で、窓口スタッフとして来店者をにこやかに迎えているのが飯島智香子さんです。「地元密着の小規模な店舗で、顔なじみのお客さまも多い」そう。

15年前の離婚を機に就職活動をし、週5日、フルタイムの契約社員として働き始めました。郵便物の受け付けと、取り扱っている食品などの販売が主な業務です。

「子どもたちとの生活費のため、というのが就労した一番の理由ですが、もともと人と接するのが好き。地域の方がわざわざ顔を見に来てくださったり、紹介した商品を喜んでくださったりするのが何よりのやりがいです」

4年後、65歳で定年を迎えますが、その後も何かしら仕事をしたいと話します。

「社会と関わり続けていたい。一人の時間は大切だけど、孤独は嫌ですね。人と会うことでメイクなど外見にも気を遣うので、自分のテンションも上がります」

そういう飯島さんの手元を見ると、上品なピンクのネイルがキラリ。「娘が勧めてくれて。お客さまがほめてくれることもあるんですよ」。支えてくれた家族や友人のためにも生き生きと働き、笑顔でい続けたい、と話してくれました。

通信販売業 テレホンオペレーター 田村直子さん(60歳)
左)「仕事で落ち込んでも引きずらない、マイペースです」と田村さん
右)食べることが好きで、仕事で得た収入で料理教室も受講

通信販売の会社で、テレホンオペレーターとして働く田村直子さん。出勤してパソコンの前に座ると、一日の仕事が始まります。勤務は週3日、各日3〜8時間。

「顧客に電話で商品を紹介するのが業務。扱う商品は事前に調べたり使ったりして、良さを自分の言葉で伝えられるようにしています。お客さまに『お話しできて楽しかった』などと喜んでもらえるとうれしいですね」

大学卒業後、数年で専業主婦となった田村さん。子育てが一段落した43歳から飲食業のパートを始め、47歳で以前から興味があった現在の仕事に転職しました。並行して、デパートのレジや選挙の投票受付、交通量調査など「おもしろそう」と思った短期アルバイトにもいくつかチャレンジしてきたそう。

「いろいろやってみたいタイプ。65歳の定年後も、単発で新しい仕事にトライしたいですね。働いていると人間関係も広がります」

仲良くなった同僚と旅行に行くこともあるのだとか。

収入の使い道は、まず老後のための貯金。ほかにも習い事の費用、友人とのランチやちょっといいチョコレートなど、「自分の機嫌がよくなるもののために使っています」

茶道教室主宰 岩田千香子さん(60歳)
左)「茶道は意外と体幹が必要です」と岩田さん。日ごろから階段を使うなど体力維持の努力をしているそう
右)教室は和やかな雰囲気。「目指すは、90代まで現役だった私の師範です」(岩田さん)

静かな茶室に響くのは、お茶をたてる「シャカシャカ」という心地よい音。岩田千香子さんは、毎週末を中心に自宅で茶道教室を開いています。20代で習い始めた茶道を教える立場になったのは、50歳を迎えたとき。

「それまで国家公務員をしていたのですが、今後の人生を考えたときに『好きな茶道に時間を使いたい』と思って早期退職しました」。父親が亡くなったこともあり、夫と相談して母親が住む城陽市に自宅兼教室を建てたのだそう。

公務員の仕事も委託職員として続けていて、週3〜5日は出勤しているのだとか。休みがない週もあるそうですが、「何もしていない時間が苦手なんです(笑)。人生には緊張感を持ち、背筋を伸ばす時間も必要。仕事は何よりの張り合いです」と岩田さん。

特に茶道教室は、「生活に彩りをくれるもの。できる限り続けたい」といいます。「習い事より、仕事として携わるほうが楽しくなりました。たくさんの生徒さんと出会えて、一緒にお茶の世界を楽しめる。それが何より幸せですね」

60歳以上の女性読者に聞きました「私たちが働く理由」

60歳以上の女性読者の就労状況

60歳以上の女性読者に聞いたところ、就労している人は約80%。週に2〜4日働くパートタイマーが多いのですが、約20%はフルタイムの正社員、契約社員または自営業です。

仕事をしている理由の最多は「生活費のため」ですが、「社会とのつながり」や「生きがいのため」「仕事が楽しい」からという声も。「体が動くうちはずっと働きたい」と回答する人も多数。70歳、80歳を超えて社会で活躍する女性が、これからもどんどん増えるかもしれません。

働いている理由

  • 一人暮らしのシニアにとって人と関われるのは幸せ。孤独を感じず毎日楽しく生きられる(S.Nさん・70/会社事務など)
  • だらだらとした日常を送りたくないし、得られる収入で余暇を充実させたい(K.Sさん・64/スーパー事務)
  • 好きな専門職であり、必要とされているから(S.Mさん・61/陶芸家のサポート)
  • 「来てほしい」と言われると、自分も世の中の役に立てていると感じるから。普段は配偶者と二人きりの生活で、張り合いがない(M.Nさん・64/教育系)
  • 仕事をしていると化粧もするし服装にも気を使う。いろいろな人と話すことで学びや気分転換になる(M.Fさん・60/販売接客)
  • 年金では暮らせないので、元気なうちは働いてお金をためたい(H.Tさん・62/事務)

働いていない理由

  • 孫の世話で時間がない(M.Tさん・60)
  • 長年共働きだったが、現在はいろいろな社会活動で忙しい(T.Nさん・77)
  • 元気なうちにやりたいことがある(K.Oさん・70)