家族の介護時、どう接する?

2026年2月6日 

親や祖父母の介護を行う中で、接し方に悩むことがありますね。専門家の知識や会話術を取り入れることで、悩みを軽減できるかも。読者の体験談をもとに紹介します。

イラスト/オカモトチアキ
※2025年12月にリビング読者にアンケート。有効回答数361

声のかけ方などコミュニケーションの悩みが多数

読者にアンケートを取ったところ、介護中は、相手の態度や考えの変化に振り回されたり、こちら側の思いがうまく伝わらなかったりと、やきもきしてしまうことがあるという声が多く寄せられました。

日ごろの声のかけ方や病気に配慮した接し方など、さまざまな悩みの中から六つをピックアップ。社会医学を専門とする立命館大学スポーツ健康科学部の教授・清家理(せいけあや)さん、京都府介護福祉士会の理事・木村美由紀さんにアドバイスをもらいました。

お悩み1

【読者の体験談】
離れて暮らす、母は私が訪れると喜び、ずっとそばにいてほしがる。私は長居ができず、心が痛みます(Aさん・58歳)

遠距離介護や施設での面会といった場面では、『次はいつ会えるかわからない』という不安から、家族の帰りを引き留めようとする人が多いそう。

「認知機能が低下している人には、長い説明や理屈はかえって不安を与えてしまいます。『また○日に来るね』と、次の訪問日を明確にし、〝短く、繰り返し伝える〟ことが大切です」と、清家さん。

木村さんからは「一緒にカレンダーを確認し、訪問予定日に大きく花丸を書くなど、視覚に訴えるのも効果的です」とアドバイスが。ヘルパーを利用しているなら次回訪問日を伝えておいて、定期的に「次は○日に会えますよ」と声をかけてもらうという方法も。

ただし、いずれも重要なのは「予定を伝えたら、約束を守ること。その積み重ねが安心感につながる」といいます。

お悩み2

【読者の体験談】
同じことを何度も言われたり、反対にこちらが何度言っても伝わらなかったり。イライラして口調がキツくなり自己嫌悪に陥ってしまう(Mさん・51歳)

「まず、常に優しくなければいけない、と自分を追い込まないことです。『できない日があっていい』『ここまでよくやってきた』と自分を労わることも忘れないで」と清家さん。「声が荒くなりそうなときは、一旦その場を離れて深呼吸するなど、自分を落ち着かせる間を作りましょう。心の余裕を保つために、意図的に家族と距離を置く日や、自分のための時間を作ることも大切」とか。

木村さんは、「何度も同じことを言うのは不安の表れという場合も。相手を否定せず、毎回初めて聞いたように接すると、結果的にやり取りが短く済むことが。これも安心感を与える一種の技術です」と。

また、高齢になると高音や早口が聞き取りにくくなるよう。「話しかける時は耳元でゆっくり、はっきりと短く伝えて。このとき、正しく理解してもらうことよりも、『大丈夫だよ』と気持ちに寄り添うことを意識するとよい」そうですよ。

お悩み3

【読者の体験談】
誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすいので、ゆっくりよくかんでほしいのに聞いてくれない(Hさん・66歳)

健康や安全を考慮して、さまざまな場面で家族に行動を促すことがありますね。

清家さんによると、食事のときは「一緒に一口ずつ食べよう」と、共に取り組むのが効果的とか。

「〝できること〟に注目し、肯定することも大切」と木村さん。ゆっくり食べることができた、薬を飲むのを忘れなかったなど、できたことに対して「すごいね」「できたね」と伝えるようにしましょう。ささいなことでも、それは成功体験。お互いに良い面を意識するほうが、前向きに取り組めるように。

「『言うことを聞いてもらう』という発想から、『前向きに取り組めるような関り方をする』に、視点を変えていきたいですね。介護は、介護される人の生活を支えるためのもの。『どうしたい?』『困っていることはある?』と、まず理解を示すことが出発点になります」

また、病院や介護サービスの利用を勧めるときは「介護者の都合や思いを優先すると、自尊心を傷つけ反発を強めてしまいます。病院には『とりあえず相談だけ』、施設は『見学だけ』と、ハードルを下げてみて」。

お悩み4

【読者の体験談】
本人は認知症の自覚がなく、自分の間違いや失敗を認めない。特に金銭面で身内を信用しない(Kさん・53歳)

物忘れや被害妄想といった症状が表れる認知症。

間違いの指摘は逆効果になるため、無理に正す必要はないそう。

金銭管理など周囲にも影響がある場面では「介護される側とする側の対立構造をつくらないよう、環境を整えて」と清家さん。家族への不信感が強いときは、地域の支援員やケアマネジャーなど、親も顔なじみの第三者を交えるのが有効だといいます。「物がなくなった」「盗んだのか」と言われたときは、否定や反論をせず「一緒に確認しましょう」と声かけを。

「探し物は、本人に見つけてもらうこと。自分が先に見つけたときは、探す場所をさりげなく誘導してあげて」(木村さん)

認知症の症状の一つである徘かいにも、本人なりの理由があることが。「どこへ行きたいの?」「何か探してるの?」とたずねてみると、糸口が見つかる場合があります。

「過去に『仕事に行った夫が帰って来ない』と言った人がいました。話を聞いていくと、家族の見送り、出迎えをしていた過去の習慣がよみがえり、不安を覚えていたことがわかりました。この場合は『今日は出張で帰ってこないんだって』と、理由に沿った声かけが適切。不安を理解し、解消する接し方を心がけましょう」

お悩み5

【読者の体験談】
実親と違って厳しく言う事ができなくて、真意をわかってもらえない(Hさん・66歳)

介護者側が遠慮して踏み込んだ話をしづらいときは、「『お医者さんにこうしてほしいと頼まれていて』などと、「第三者の判断を介した伝え方をすることで、必要な配慮だと受け取ってもらいやすいです」と木村さん。自分の代わりに実子から話してもらうという方法も。

「お互いに本音を言いづらい義理の関係では、『ここは私がやってもいいですか』と、相手に選択を委ねる言い方を。また、『私にできることを教えてください』と相手を尊重しながら対話をしていくことで、介護に関わりやすくなります」(清家さん)

お悩み6

【読者の体験談】
・本当に必要がないから断っているのか、遠慮しているだけで我慢しているのか、区別がつかない(Oさん・48歳)

・息子が下の世話をするのは、母親の方が気を遣う(Hさん・62歳)

「『手助けはいらない』など言われても、言葉だけで判断せず、動きづらそうにしていないか、肌荒れや匂いがないかなど、よく観察して介護の必要性を見極めたいですね」(清家さん)

介護されることに抵抗感がある人に対して、「遠慮しないで」と伝えるのは、かえって相手を追い込んでしまうことが。

排せつや入浴の介助など、プライバシーに配慮したい場面も同様。家族がケアを行う際は「少しやってみよう」「嫌だったらすぐやめるね」と伝えることで、相手も本音を伝えやすくなるそう。

「大事なのは断ってもいい、途中でやめてもいいという選択肢を先に示すことです」

木村さんからは「訪問介護などプロを頼るという手も」と。「プロによる手早く丁寧なケアは、介護される側の心理的な負担が少ないといわれています。また、家族に言いづらい悩みや不安を吐き出す機会になることもあります」

〈 教えてくれたのは 〉

立命館大学
スポーツ健康科学部
教授 清家理さん

京都府
介護福祉士会
理事 木村美由紀さん

2人からのメッセージ
「介護中は、老いや病気の影響だとわかっていても、感情が割り切れない場面がたくさんあります。そんなときは、プロの意見を聞いたり支援を受けたりすることで、客観性を取り戻せることも。介護者自身が心の余裕を持つことで、家族への接し方も変わっていきますよ」

(2026年2月7日号より)