観光をキーワードに〝双方良し〟を目指しています

2026年1月30日 

リビング編集部

一年を通して、たくさんの観光客が訪れる京都。観光客も、迎え入れる人も、どちらも笑顔になれそうな取り組みをする人々がいます。地域の四つのグループの取り組みとは。

撮影/桂伸也、深村英司ほか

平等院近くで、「インタビューしてもいい?」と英語で外国人観光客に話しかける子どもたち。小学生・中学生の6人組です。

「どこから来たの?」と聞くと、「メキシコ!」という答えが。そこで、「10円玉は持っている? 表に描かれているのが、そこにある平等院だよ」と伝えると「知らなかった」と観光客が驚きの声を上げました。

宇治市などの観光地で活動

彼らは、宇治市を拠点に活動する「K.D.P.子ども観光ガイド」というグループのメンバー。KDPは〝KYOTO DISCOVERY PROJECT〟の略で、「観光客に地元の魅力を伝えることで、京都の良さを発見したい」という思いで結成されました。メンバーは小・中学生が中心。主に宇治市や伏見区などの観光地で活動しています。

宇治川にかかる橋の上で観光客に話しかける子どもたち。活動時はオリジナルのベストを羽織ります。オーストラリアのバレーボール選手から「日本で有名なバレーボールの漫画があるよね」といった話も
子どもたちと観光客。毎回インタビューの後には、観光客にプレゼントを渡しています
アメリカからの観光客に宇治茶について説明する場面も

学校ではできない経験も

主宰は、元教員の竹田さん。以前の職場で行っていた取り組みを個人で継続しているのが「K.D.P.子ども観光ガイド」です。

「大切にしているのは地域の魅力を知ること。今回は宇治茶について説明しようとテーマを決めると資料を読み、事前に準備をしています」

外国人観光客から意外な情報を聞くこともあると竹田さん。

「ハワイに平等院の姉妹神社があると教わったこともありました。観光に訪れる人から知らなかった京都の新たな一面や良さを聞くこともできるんですよ」

子どもたちは、活動についてどのように考えているのでしょう。

メンバーの中学2年生の女性は「学校ではできない経験をたくさんしています。会話の中で、授業では習っていないフレーズを聞くことも。会話が弾むと楽しいし、もっと交流したいです」と言います。同じく中学2年生の男性は、「外国の人に京都や日本のことを伝えて喜ばれると、誇らしい気持ちになります」と話してくれました。

外国人観光客に地域の魅力を知ってもらうだけではなく、子どもたちは学びや経験になる。お互いに得るものがある活動なのですね。

活動は春から秋を中心に、土日に不定期で開催。参加費は活動内容によって変動。資料代や保険代などがかかります。
参加希望など、問い合わせは竹田さんまで
メール=kyotorian.discovery.project@gmail.com=で。
インスタグラムは「kdp_guide」で検索を。

交流した観光客からの手紙

江戸時代の山科名物を再現
歴史を知るきっかけに

旧東海道を往来する旅人の疲れを癒やしたであろう一つの和菓子。いつしか姿を消した江戸時代の山科名物が、昨年3月、住民の手により復活しました。

「『道晴餅(どうはれもち)』というお菓子です。江戸時代、山科区の東にある四ノ宮にあった茶屋で出されていたと考えられています」。そう話すのは、「やましな道晴餅復活プロジェクト」のメンバーの1人であり、山科区の観光ガイドも務める東さんです。

「やましな道晴餅復活プロジェクト」のメンバー。「やましな道晴餅」を提供しているカフェの前で。左から3人目が東さん

同プロジェクトは、東さんをはじめ歴史研究家や地域の和菓子店や洋菓子店などの店主らで構成。「かつての名物を復活させ、まちおこしにつなげたい」という思いで、昨年2月に活動が始まりました。

ですが、大きな問題が。

「レシピが残っていなかったんです。そこで、江戸時代の文献『木曽路名所図会』に載っている道晴餅の絵をもとに再現することにしました」

「やましな道晴餅」には西京みそを使ったタレがたっぷり
江戸時代に編さんされた「木曽路名所図会」
絵には大きな「道晴餅」が

絵を見ながら、「食べたそうにしている犬がいるから、香ばしい匂いが漂っているのでは」「見た目はこの絵のままかな」など、想像をふくらませていったそう。材料は和菓子店の店主が当時使われていたものを推測。サイズを調整するなど試作を重ね、1カ月後に完成。「やましな道晴餅」と名付け、地域のイベントで振る舞われました。

さらにその1カ月後の4月には、山科区の和菓子店やカフェなどでの販売もスタート。

「レシピは各店でアレンジしているので、さまざまな『やましな道晴餅』の味を楽しんでいただけます。ただ包装紙は共通。由来を印刷したものを使用しているんです。このお菓子を通して山科の歴史を知ってもらえれば」と東さん。観光客からは「歴史を知った上で食べると、より味わい深い」と好評だとか。SNSを見た外国人観光客が買いに訪れることもあるそうですよ。令和の旅人の〝旅のお供〟にもなっているようですね。

嵯峨商店街のお店が一目で分かる
共通のステッカーを設置

観光客でにぎわう嵯峨・嵐山。JR「嵯峨嵐山」駅の南出口から出てすぐ、正面の通りに「嵯峨商店街」の看板が見えます。通りを進むと、道沿いの電柱や店の軒先にも同じデザインのステッカーを発見しました。

こちらのステッカーは、2024年8月に嵯峨商店街活性化委員会が作成。東は渡月橋から続く長辻通、西は嵐電「嵐電嵯峨」駅、北は新丸太町通、南は三条通付近まで見られます。

左:「嵯峨商店街」の文字は大きくて読みやすい字体に
右:店先のステッカー。商店街の雰囲気にあわせてレトロなデザインに

委員会メンバーの田中さんに設置の理由を尋ねると、「アーケードがなく、お店が点在しているので、ここが商店街だと分からない人も。商店街としての認知を広め、もっとお店を巡ってもらいたくて」と話します。ステッカーには、2次元コードが記載され、読み込むと各店の場所が表示されます。「以前は、商店街にはどんなお店があるかを聞かれることが多かったんですが、そういった声も減ったように思います」

商店街では、店同士の交流も大切にしているそう。

「各店が連携していれば、落とし物の問い合わせや救急対応、災害時などにも役立ちます。そのつながりを大事にすることが、観光客のためにもなると思っています」(同商店街顧問の加藤さん)

顧問の加藤さん(左)と、田中さん

サイクルラックが23カ所
西山地域を自転車で巡りやすく

西山地域の、歴史ある寺社やグルメスポットを自転車で散策してもらおうと取り組んでいるのが「京都西山・大原野保勝会」です。「自転車で観光する人に役立ててほしいと、社寺など23カ所にロードバイク用のサイクルラックを設置しました」と同会会長の小原さん。

竹のサイクルラック。ロードバイクのサドルをバーに引っかけて固定します

同会が自転車観光を推奨するのには、このエリアならではの理由が。「京都市西京区の洛西地域、向日市、長岡京市、大山崎町に広がるこの地域は観光地間の移動が公共交通機関では効率がよくできないところが多くて」と、京都市西京区役所洛西支所地域推進室の池島さん。行政も同会の活動をサポートしています。

長岡天満宮の境内には、放置竹林から伐採した竹を活用したサイクルラックを設置。「竹林が多いのも、この地の特徴。竹林公園や竹の経(みち)など名所のアピールにもつながれば」(小原さん)。

中央が「京都西山・大原野保勝会」会長の小原さん。左が京都市西京区役所洛西支所地域力推進室の天野さん、右が池島さん

2024年からはイルミネーションイベントを開催。こちらにも竹で作ったオブジェが数多く並んだそう。昨年の夏祭りには、竹製のやぐらも。

「いろいろなことをきっかけに、多くの人にこの地を訪れてほしい。それで地域はもっと元気になると思うんです」

(2026年1月31日号より)