日常動作に欠かせない〝お尻〟の役割

2026年1月23日 

リビング編集部

立つ、歩くといった日常の何気ない動作。実は、お尻とも密接な関係があるとか。その役割を知り、健康を維持しましょう。

イラスト/かわすみみわこ

近年、欧米をはじめ日本でも注目されているという〝お尻の筋肉〟。京都大学大学院医学研究科の教授で、股関節の専門家である建内宏重さんに話を聞きました。

「股関節は上半身と下半身をつなぎ、全身のバランスを保っています。そして多様な動作を可能にする重要な部分。その股関節の動きをつかさどる筋肉の一種が、お尻の筋肉、つまり〝臀筋(でんきん)〟です。歩く、階段をのぼるなどの日常動作や運動をするとき、臀筋が股関節を支えることでスムーズに動けるのです」

ですが、何もしないと加齢とともにお尻の筋肉は徐々に衰えてしまうとか。衰えたお尻は全体的に張りがなくなったり、固く凝ったような状態になったりするのだそう。

「それを防ぐには、意識して臀筋を使ったり、トレーニングをすることが大切です」

特に日本人は鍛えたほうがいい理由があるといいます。

「人種的に、特に女性は股関節に負担がかかりやすい形状の人が多いのです。そのため軟骨がすり減りやすく、変形性股関節症の原因になることも。股関節を支える臀筋を鍛えることでその負荷が抑えられ、予防につながります。歩いたり階段を使ったりして、適度に臀筋に刺激を与えていきましょう」

チャレンジ!

お尻の健康度を確認できる分かりやすい方法を建内さんに教えてもらいました。

  1. 両膝を立ててあおむけになります。足幅はこぶし一つ分くらい空けます
  2. 片足を高く上げ(イラスト参照)、反対の足は床に着けた状態で、お尻に力を入れて腰・お尻を持ち上げます
  3. 肩・腰・膝が一直線になる高さまでお尻を持ち上げられるかチェックを。腰が下がってしまう人は、お尻の筋肉が衰えている可能性があります

臀筋は複数の筋肉が重なって構成されているそう。主なものは次の四つ。

「お尻の表面にある最も大きな筋肉が大臀筋。階段をのぼるときや歩くときに使われます。お尻の上部側面には中臀筋、その下層に小臀筋があります。これらは、歩く、走るという動作や、片足でまっすぐ立つときに欠かせない筋肉。動作による衝撃を受け止め、体のバランスを保ちます。四つ目は、深層外旋六筋と呼ばれる小さな六つの筋肉。お尻の深層部にあり、股関節を支えて安定させる役割があります」

「大臀筋、中臀筋、小臀筋が衰えると股関節が不安定になり、腰や膝、足へ余分な負担がかかってしまいます」と建内さん。臀筋を鍛えると腰痛、膝痛が改善されることも多いとか。

「深層外旋六筋は、ぼうこうを支えて尿道を締める役割を持つ骨盤底筋ともつながっています。そのため、筋力低下は間接的に尿失禁の原因になるともいわれています。また、深層外旋六筋が固くなると、そばを通る座骨神経を圧迫し、痛みが出ることも」

これらは若い世代でも起こり得るとのこと。なるべく早期から臀筋の筋力をキープするとともに、柔軟性も保っていく必要がありそうです。

日常でも、意識をすれば効果的に臀筋を動かすことができるそう。

「まず歩くときですが、なるべく歩幅を大きくすると臀筋をよく使うことができます。いすに腰かけるときはスクワットの要領でゆっくりと座りましょう。ポイントは背中が丸まらないよう、股関節から上半身を曲げること。脚は腰幅より広めに開き、つま先と膝を外向きにして前傾姿勢で行いましょう。立つときは逆の動きで、お尻の穴をキュッと締めるような意識を。階段をのぼるのもとても効果的。やはり背筋を伸ばしたやや前傾姿勢で、お尻を意識してのぼります」

下に落ちたものを拾うといった動作も、前述のポイントを押さえて行うと良い、とのこと。

デスクワークなど座っている時間が長い人は背中や腰が丸まりやすく、骨盤も後ろに倒れがちになるそう。そこでオススメなのが、臀筋のストレッチです。

「座ったまま足を腰の幅より広く開き、背筋を伸ばしたまま深くお辞儀をするように上半身を前に倒します。臀筋が伸ばされるとともに、骨盤が前に倒れて、臀筋を動かしやすくなります。もちろん、たまに立ちあがって体を動かすことも大切ですよ」(建内さん)

5分程度でカンタンにできるお尻のトレーニングとストレッチを建内さんに教えてもらいました。テレビを見ている最中や寝る前にトライしてみて。ただ、股関節や膝などが痛む人は無理は禁物。かかりつけ医と相談して取り組みましょう。

  1. 片手でいすなどにつかまり、背筋を伸ばしてまっすぐ立ちます
  2. 手と反対側の脚を伸ばしたままゆっくり横に振り上げて戻す動きを10回繰り返します。もう片方も同様に

ポイント

お尻の側面の筋肉を意識しましょう。上半身は常にまっすぐに

  1. 横向きに寝て両膝は90度に曲げます。頭と足先は一直線上に置きます
  2. 両足を閉じた状態から、上側の膝だけをゆっくり上に開き、戻す動きを10回繰り返します。反対側も同様に

ポイント

上半身が後ろに倒れないよう、また腰が反らないように腹筋にも力を入れて

  1. あおむけになり、右膝を曲げておなかに近付けるように両手で抱えます
  2. 30秒ほどキープしたら元に戻します左右交互に行います

ポイント

伸ばしているほうの脚は、膝を曲げないでまっすぐに

教えてくれたのは

京都大学大学院医学研究科
教授・理学療法士
建内宏重さん

(2026年1月24日号より)