私が本を読む理由

2025年10月31日 

リビング編集部

最近、本を読みましたか。さまざまな娯楽を選べる今の時代、読書離れが進んでいるというデータもあるといいます。そんな中、普段から本に親しんでいる6人の読者に会ってきました。主に手にするのは、電子書籍ではなく〝紙の本〟。それぞれが語る、本を読む理由や紙の本ならではの魅力とは。

撮影/桂伸也、山﨑晃治

非日常感を得て、リフレッシュ

砂田加奈さん(43歳)

愛犬をひざに乗せて。「外出先に書店があるとつい立ち寄ってしまいます。棚に並ぶ背表紙を見るだけでも楽しいです」

「小説や実用書など。毎日1時間くらい本を読んでいます」と話す砂田加奈さん。「小説だと非日常感を得られてリフレッシュできますね。仕事に関わる実用書で知識を得ることもあります」

読書の時間は、主に電車での移動中。荷物が増えるものの、「〝作品を持ち歩く〟という感覚が好き。これは紙の本ならではのぜいたくです」。

本を読むときは、こんなことにも気を付けているといいます。

「電車の中でスマホを見ている人は姿勢が悪い人が多い気がして。自分は気をつけようと、背筋を伸ばして美しくと意識しています」

砂田さんは小さいときから読書が好きだったそう。その理由は。

「親が本をたくさん買ってくれたので、読む習慣が付きました。一人っ子だったので、寂しくないようにしてくれていたのかも。と、いま思いました(笑)」

自分だけの主人公を作りだす喜び

西田順一さん(58歳)

小説を読みながら内容を映像化しているという西田さん。「静かに読んでいるように見えて、頭の中ではすごいドラマが繰り広げられています(笑)」

西田順一さんの読書スタイルは、好きな作家の本を繰り返し読むこと。

「例えば京極夏彦さんは、文章の途中でページをまたがない、難解漢字がよく使われる。そうしたこだわりを感じながら読むと面白さが倍増します。村上龍さんの作品も好んで読んでいます。ある作品には、あこがれの登場人物がいて。読むたびに『こんなふうに生きてみたい』と思わせられます」

どんどん画面が変わる映像ではなく、ページをめくることで発見や出あいがある本が好きだという西田さん。

「話し方はこんな感じで、顔立ちはこんな感じでと、自分だけの主人公が出来上がることも楽しいです」

装丁も、本を読む醍醐味(だいごみ)の一つ。表紙を見ただけでは分からなくても、読み終えたときに「だから、この装丁だったのか」と納得できることもあるのだそう。

そして、本は借りるのではなく購入する派。本によっては特別なしおりが付く場合もあるとのことで、さらに購買欲がかき立てられるそう。

心を落ち着かせる、よりどころ

石井直子さん(56歳)

「本を買い過ぎて、家の床が抜けそうと思ったことも。今は、お気に入りの本だけを手元に残しています」

小学生のときから毎日。長く続く、石井直子さんの読書習慣です。本を開くのは夜、寝る前のひと時だとか。

「昔から続く習慣だからか、本を手に取るとホッとします。紙の手触りや本の厚みにも安心感をもらえる気がしますね。生きていると、日々、いろいろなことがあります。でも、本を読んでいると悩みや心配事から離れて本の世界に没頭できます」

さまざまなジャンルの本を読むという石井さん。好きなのは、「登場人物が何らかの問題を抱えながらも、〝それなり〟に日々を過ごしていく結末の話です。感情移入しやすいからかも」。

昔は一晩で1冊を読み終えることもあったそうですが、「今は目も疲れますし(笑)、2、3ページで終わることもあります。それでも、本は心のよりどころで支えになるもの。しんどくても眠くても、読まないと1日が終わりません」。

学びを深めて、スキルアップにも

上田妙子さん(43歳)

「明るい装丁の本が好きです。ページをめくったときに、きれいなイラストが目に入ると楽しい気分になりますね」

子どもの習い事が終わるまでの待ち時間、電車での移動時間といったすき間時間に本を読む上田妙子さん。

「自己啓発本を選ぶことも多いのですが、それは仕事に関わるスキルを上げ、知識を得たいから。本の内容に影響されるのではなく、自分の考えや学びを深めるきっかけにもしています」

小説やエッセーなどは、装丁に一目ぼれをして買うこともあるとか。

本好きな上田さんは、電子書籍も活用。

「スマホでいつでも気軽に読めるので便利ですよね。でも、LINE(ライン)などの通知が画面に表示されるので、集中できないデメリットも。本に没頭するなら、私には紙の本が合っているかな」

こうして増えてきている紙の本。

「ここで買ったなとか、この本は友だちに勧められたんだ、とかそれぞれに思い入れがあって処分できませんが、〝残るうれしさ〟があるのも本の魅力。好きな本が棚に並んでいるだけで楽しい気持ちになれます」

いつかは子どもたちにも読んでほしい、そんな気持ちで本棚を眺めることもあるのだとか。

〝違う自分〟に出会える楽しさ

山本扶美子さん(61歳)

山本さんのお気に入りの読書スポット「お茶と宇治のまち歴史公園 茶づな」(宇治市)にて。「時折、本から目を上げて、鳥のさえずりを聞いたり、心地よい風を感じたりしています」

時には冒険心あふれる宇宙飛行士に、時には華麗に謎を解明する探偵に。

「日常を離れて本の世界に入り込み、違う自分になれるのが魅力です」。目をキラキラと輝かせながら話すのは山本扶美子さん。「本の中では、現実では考えられない〝ダークな私〟にもなれるんですよ」と笑います。

登場人物になり切れるという点では映画でも同じでは? そんな質問をしてみると。

「その世界に戻りたいとき、映画はもう一回、お金を払って見に行かないといけませんが、本は違います。手元にあれば思い立ったときに何度でもその世界に戻れる。『あのセリフ、良かったな』というときもページをめくれば、すぐにそのフレーズに出あえます」

山本さんは〝あのセリフ〟がある場所は感覚で覚えているといいます。

「確か右ページにあったなとか、開いていたページが左手よりも右手の方が重かったから最後の方かなとか。なんとなく頭に残っています」

これからも、こうした記憶が積み重ねられていきそうですね。

子どもにも読書の習慣を

原暁子さん(44歳)

「読書を継続することで集中力や理解力が高まるような気がしています」

3人の子どもを育てる原暁子さんは、本から育児のヒントを得ることがあるそう。

「小説、自己啓発書などジャンルは問いません。本を読んで、何かしら〝いいな〟と思えることがあれば取り入れます」

紙の本ならではのメリットがあると原さん。

「目も耳も使うテレビや、情報があふれているスマホやパソコンから離れることで心が静まります。気持ちをリセットできる点は大きいですね」

実は、原さんが本に手を伸ばすようになったのは今年に入ってから。

「独身の頃はよく読んでいたのですが、子どもが生まれてからは忙しくて離れていました。でも、子どもにも読書習慣を付けてほしくて。私が本を読んでいる姿を見せたいなと思ったんです」

今では、「ママ、どんな本がいいか教えて」と子どもから言われるようになったそうですよ。

ほかにも、こんな〝本を読む理由〟が

  • 映画やYouTubeで得た情報に対して、もう少し内容を深めたい時や本当に正しいかを見極めたい時に主に読みます。映像では省略されていることが多かったり、専門外の方が制作したりしていることもあるためです(MA・50歳)
  • いろいろな知識の習得と気分転換。ウェブは長時間見ていると料金や電池残量が気になったり、つながらなくてイライラしたりするけれど、本は好きなだけ繰り返し読めます(OK・50歳)
  • 本を人に貸したり、または借りたりして、その話題に花が咲くのも楽しい。また、映画化された作品で興味があるものは、鑑賞前に読みます。より深く理解して映画を見ることができます。内容が変わっててがっかりする事もありますが、悲しい結末が映画では少しハッピーになっててうれしくなる事も(TM・59歳)
  • 好きなお笑いタレントが書いた小説やエッセーを読むと、その人たちの違う面を見ることができて面白い(TY・48歳)

※2025年9月実施のアンケートより

編集部から

取材を終え、記者が思い出したのは高校時代のこと。当時の国語の先生の影響で、「読書日記」を付けていました。ノートに題名、読んだ日、読後の感想を書いただけの簡単なものでしたが、記録するのが楽しく、休みごとに図書館に行き、1日に何冊も読んでいました。今はそのときほど読書にパワーを注ぐ体力はありませんが、10月27日〜11月9日は読書週間。この機会に、新しい一冊を読んでみようかと考えています。

(2025年11月1日号より)