
最近、幅広い年代で人気が高まっている編み物。針と手編み糸があれば気軽に始められるのも魅力です。長年の趣味として楽しむ人もいれば、最近になって新しく挑戦した人も。今回は、そんな読者それぞれの〝編み物時間〟を紹介します。
撮影/深村英司ほか イラスト/オカモトチアキ
作るのは夕食後 月に1回マルシェにも出展
宇山晴美さん(73歳)

宇山さんが編み物を始めたのは、約60年前の小学生の頃。
「実家の銭湯の番台で、祖母に教わっていました。大人になってからは、仕事や子育ての合間に、時間を見つけてはたわしやペットボトルホルダー、バッグなどを作り、うまくできたら友人や親戚にプレゼントしていました」
雑誌を見て気になったアイテムを、編み図(コチラで解説)を参考にしながら作っているとか。
「配色や大きさを変えるなど、自分なりのアレンジも加えます。お気に入りの手芸店に出かけて、手編み糸の麻を見つけたら帽子を、綿がたくさん手に入ったらチュニックを、というように材料をもとに作るときもあります」
現在、編み物をするのは夕食後、テレビを見ながら。ペットボトルホルダーは3日、チュニックは1カ月ほどで出来上がるといいます。
昨年からは、向日市の来迎(らいこう)寺で月に1回行われているマルシェにも出展。
「お寺の別のイベントに参加していた縁で声をかけてもらい、出展するように。かわいい、と喜んでもらえるとうれしいです。お客さんの反応を見て、次に何を作ろうかなと考えます」
最近、中学2年生の孫が手芸部に入ったそう。
「2人で手編み糸をシェアすることも。これからいろいろ教えてあげたいですね」と笑顔で話してくれました。


仕事仲間とにぎやかに 打ち解けるきっかけにもなっています
「かぎ編みサークル」

8月のある金曜日の夜に、カフェに集まったのは、不動産会社の社員らで結成された「かぎ編みサークル」。メンバーの八田篤美さんによると、今年5月に発足し、月1回、3~4時間ほど活動しているのだとか。
部長は、学生時代から編み物が趣味という奥村和佳(のどか)さん。「当社では、部署を越えた社内コミュニケーションの活性化を目的に、サークル活動を推進。その中の一つです。メンバーは10人ほど。ゆるく活動しています」
作品は、キーケースやアクリルたわしなど、さまざま。インスタグラムで見た作品をメンバーに相談しながら作る横で、初心者はシンプルなかぎ編み(※コチラで解説)を教わるなど、基本的には各自、マイペースに取り組むスタイルです。
八田さんは、「当初は刺しゅうなどにも挑戦する『手芸サークル』にしてはと思っていましたが、編み物に絞ることで共通の話題ができ、これまで話したことがなかった仕事仲間と打ち解けられたのもうれしい」と言います。
時には鴨川べりでおやつを持ち寄ってピクニック気分で編み物をすることもあるそうですよ。


学校の探求学習がきっかけ 弟のマフラーが最初の作品
島崎結さん(10歳)

「編み物に興味を持ったきっかけは学校の授業でした。自分で決めた課題に挑戦する週に一度の探究学習で、編み物をしているクラスメイトがいて、興味を持ちました」と話すのは、小学4年生の島崎結さん。結さんの母・愛さんは「娘は水泳やダンスが好きで活発なタイプですが、落ち着いて作業する時間も持てて良いと思います」と話します。
初めての作品は、赤とピンクが好きな4歳の弟のためのマフラー。インターネットの動画を見ながら作りました。今はさらに高度な作品に挑戦している結さんの強い味方は、自宅近くに住む祖母の信子さん。
愛さんは、「私の母も祖母も編み物が得意で、幼い頃に手編みのセーターを作ってもらったことも」と振り返ります。「結のために編み物の本を買いましたが、子どもには少し難しく、夏休みなど『おばあちゃんに聞いてくる』としょっちゅう出かけていました。母もそんな時間を楽しんでいるようです」
手編み糸は祖母からもらったり、祖母と近所の百円均一ショップで買ったり。最新作は、フリル付きのコースター。いずれは、「バラみたいなお花を作ってみたい」と、結さんの編み物への思いは、ますますふくらんでいきます。

昨年秋ごろからブームが
初心者には太めの手編み糸もおすすめ

最近の編み物の傾向について、京都で毛糸と手芸用品の生産・卸を行い、直営店も持つ「ハマナカ」営業部の担当者に話を聞きました。
「女性アイドルやインフルエンサーなどがSNSで作品を発信していることが、昨今のブームのきっかけだと思われます。手芸メーカーや手芸材料店によると、昨年秋ごろからは、手編み糸の売り上げも好調。若い方だけではなく、シニアで初心者だという方の来店も増えていると聞きます」
ウール、モヘア、アクリル、コットンなどの素材から作られる手編み糸。「最近は太さが一定の手編み糸、『ストレートヤーン』がよく選ばれているそうです。編み目が見えやすいので、初心者にもおすすめです」。秋冬はウール、春夏はコットンを使った手編み糸もよく出るとか。
少ない玉数で完成する小物や、あみぐるみなどを作る人が多いといいます。
「難しく思われがちな作品でも、同じ模様の繰り返しであれば、初心者でも取り組みやすいです。2、3玉で出来上がるものもあります」
糸が太いと編む回数が少なくなるため、初心者や時間を短縮したい人に適しているそう。
「編み物にはリラックス効果があるといわれていて、作品が完成したら達成感も味わえます。失敗してもほどいてやり直すことも可能です。ぜひ気軽に挑戦してみてください」
おすすめのアイテム

ニッタオル
近年人気の、手編み糸で作られたタオルのこと。コットン素材の手編み糸を使うと、やさしい肌ざわりと、吸水性の良さが特長のタオルに

グラニー編みを使った作品
〝グラニースクエア〟と呼ばれるモチーフを生かして作るアイテム。くさり編み・長編み(※コチラで解説)のシンプルな編み方で完成できます
編み物の基本
編み物を始めたいと思った人に。初心者向けの、基本的な編み方などを紹介します。リビングカルチャー倶楽部で講師を勤める外園真理子さんに教えてもらいました。
必要なもの
- 手編み糸
素材はウール、モヘア、アクリルなど - 針
かぎ針と棒針があり。初心者にはかぎ針がおすすめ - 編み図
編み物の手順を記号を用いて表したもの(下図参照)
初心者向けの編み方の種類
●くさり編み
編み始めや、土台などに使う基本的な編み方

●こま編み
くさり編みの次に覚える編み方。くさり編みの目をつなげて編む、短く密な編み地

●長編み
こま編みよりも糸を長く引き出して編む方法。立体的な仕上がりに

編集部員がシュシュにチャレンジ
編み物初心者の編集部員が、外園さんのレクチャーを受けながらシュシュ作りに挑戦しました。


ヘアゴムを用意して、こま編みとくさり編みでシュシュを作りました。ヘアゴムに糸をくぐらせ、まずはこま編みを1目。こま編みは、糸を2本同時に引き抜く必要がある点が新鮮でした。次はくさり編みを12目。編み続けていくと糸を引っ張りすぎて穴に通せなかったり、持ち手が揺らいでしまったり。編み目を一つ作るにも一苦労でしたが、アドバイスのもと無心になって進めると、気づけば12目できていました。このこま編み、くさり編みを、50セットしたらシュシュが完成です。1時間で10セットほどできましたよ。慣れたらハマりそうです。
教えてくれたのは
リビングカルチャー倶楽部 講師
外園 真理子さん
こま編みを覚えると、アクリルたわしやあみぐるみなども作ることができますよ

(2025年10月4日号より)
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