
美術館やギャラリー以外の公の場に置かれた絵画や立体造形作品のことを指す、〝パブリックアート〟。身近な場所にもたくさん存在しています。作品が設置された経緯について、調べてみました。
撮影/山﨑晃治ほか
無料で鑑賞できる点が魅力 触ることができる作品も
「〝その場になじむこと〟と、アートにとって大切な〝違和感のようなものを生むこと〟という相反する要素を備えるのが、パブリックアートの特徴です」と、京都市立芸術大学准教授の金氏(かねうじ)さんは話します。
欧米では早くからアートが重要視され、1950年ごろには公共施設などの建設時、アートの経費を予算に組み込むよう義務付ける条例が生まれたほどだとか。日本では1970年代から設置されるようになったと言われています。
誰でも無料で見ることができるパブリックアート。
「通りがかりに眺めるのもいいですし、そのアートがなぜここにあるのかなど調べてみるのもおすすめです」
触ることができる作品もあるそうですよ。
今回は身近なパブリックアートをピックアップして紹介します。作品がある場所や名前などの詳細はページ下をチェックして。

教えてくれたのは
京都市立芸術大学 美術学部彫刻科
准教授 金氏徹平さん
❶竜が描かれているのは、警察署の外壁です

❷ビルの入り口に朱色のモニュメントが

❸道路に現われる、大きな口を開けた鬼のブロンズ像

❹平等院の〝鳳凰〟や「雲中供養菩薩像」にちなんだデザインのステンドグラスが駅ビルに

❶壁画「青龍」(東山警察署/2024年完成)
36匹のコイが鮮やかな青色や金色で描かれています

東山警察署の玄関前の外壁に、鮮やかな青色や金色の絵の具で描かれた竜が。よく見ると、体の部分はコイ。36匹のコイが竜へと変化していく様子が描かれています。こちらは、京都の四方を守る「四神(しじん)」の一つ、「青龍」。〝キーヤン〟の愛称で親しまれる壁画絵師の木村英輝(ひでき)さんが手がけた作品です。警察署の入り口が明るくなり、入りやすくなったと、地域住民からも好評だそうです。
実は同作品は連作の一つ。2013年、四神のうち都の西を守るとされる「白虎(びゃっこ)」を中京警察署の壁に描いたのが始まりです。続いて南警察署で「朱雀(すじゃく)」を表すクジャクを、京都市消防局北消防署ではゾウとカメで表現した「玄武(げんぶ)」を制作。辰(たつ)年である昨年、東山警察署に「青龍」を描き、11年にわたるプロジェクトが完結しました。
「警察と消防は京都を守る四神と同じ役割を担っている。そう思って眺めていると、誇らしい気持ちになります」(東山警察署副署長・澤田さん)



❷抽象彫刻「CONNECTION(コネクション)」(京都市下京区/1981年設置)
緑化にあわせたモニュメント

アルミニウムを主な素材に用いた作品が、京都駅の北側、「関電不動産京都ビル」の前にあります。これは、抽象彫刻の作家・清水九兵衞(きよみずきゅうべえ)によるもの。モチーフなどは資料が残っていないため不明とのことですが、なめらかな曲線が印象的ですね。誕生したのは、1981年の建設時とのこと。
関電不動産開発の担当者は「京都の玄関口に位置することもあり、当時、ビル周辺の大規模な緑化が行われました。その際に、ビルにふさわしいモニュメントも造ってはと、声が上がったそうです」と話します。
昨年11月にはビルの入り口周辺をリニューアル。モニュメントとの調和も考慮しながら、植栽面積を増やしたそう。グリーンと朱色が無機質になりがちなオフィスビルに彩りを与えていました。
❸モニュメント「鬼瓦」(向日市/1995年設置)
高さは約3m 出土品がモデルの像

向日市鶏冠井町の「東院(とういん)公園」外側の北西角に立つ、ブロンズ製のモニュメント。高さは約3mです。
モデルは、長岡京跡から出土した鬼瓦。あまりの迫力に、夜、ライトアップされているのを見たらドキッとするとの声もあるそう。
このモニュメントができたのは約30年前。1991年に近辺で同離宮跡と考えられる遺跡が発見されたことをきっかけに、近隣の約210mの長さの道路を整備。4年後、そのシンボルとして設置されました。
❹ステンドグラス「飛翔」(京阪「宇治」駅/1997年設置)
平等院の仏像が持つテーマを抽象的・現代的に表現

京阪「宇治」駅の駅舎は駅前再開発に伴い、1995年に現在の場所に移転。1996年、私鉄の駅としては初となる「グッドデザイン賞」を受賞しました。
「これを機に、97年8月にオープン予定だった駅舎と連結する『京阪宇治ビル』へのアートの設置に関して、話し合いが持たれたそうです」と京阪電気鉄道広報部の黒田恵美さん。協議の結果、ステンドグラスが置かれることになったそう。
駅は〝まちの顔〟であることから、建物自体も地域の個性を大切にしたものにと考えた同社。平等院をモチーフにしたデザインで、壁に飾るステンドグラスも〝鳳凰〟や「雲中供養菩薩像」を題材にしたものに。これらを抽象的・現代的に描けるアーティストとして、野田正明さんに原画の制作を依頼したのだとか。
ステンドグラスは2階の外壁と1階正面奥に設置。それぞれ、「天空昇」「去来、流転」の副題が。外から2作品を同時に眺められる配置になっているそうです。
サグラダ・ファミリアに設置されていた石こう像が京都市立芸術大学に
「京都市立芸術大学」の音楽ホールを併設した建物の一角に3月から常設展示されている、9体の石こう像「歌う天使たち」。こちらは、スペインにある世界遺産「サグラダ・ファミリア」教会の「生誕の門」に約10年間設置されていたものだそう。40年以上こちらの彫刻を制作してきた同大学出身の彫刻家・外尾悦郎(そとおえつろう)さんによって寄贈されました。
同大学の附属施設事務室事務長の舟瀬伴子さんは、「音楽学部も入っている棟で、『歌う天使たち』にこれほどぴったりな場所はないのでは。本学は〝開かれた大学〟をうたっています。オープンスペースに設置し、どなたでもご覧いただけますので、ぜひお越しください」と話します。



(2025年9月27日号より)
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