
東山区で開かれている「ほっとカフェ東山」。苦しみを抱える人や、自由に談笑をしたい人など、さまざまな人が集まっています。
撮影/深村英司
三つのテーマに沿って話した後は、気軽なフリートークを
「傾聴とは、耳と目と心を一つにして相手の話を聞くこと。相手の言葉を反復し、否定しない、励まさない、などのルールがあります」
そう説明してくれたのは、安井潔(きよし)さん。東山区の「やすらぎ・ふれあい館」で毎月2回開かれている傾聴カフェ「ほっとカフェ東山」の代表です。京都市ほか近隣在住のボランティアスタッフとともに運営しています。
利用者は、悩みを抱える人や、ただおしゃべりを楽しみたい人などさまざま。「話を聞いてほしい人は誰でも利用していただけます」と安井さん。
当日は大きく二つのパートに分けて実施。まず、利用者と聞き手がペアになって進める傾聴タイム。開催日ごとに用意される三つのテーマに沿って、利用者が自分の気持ちや考えを言葉にしていきます。聞き手は主に傾聴ボランティアの養成講座を受講したスタッフ。テーマごとにペアは変わります。

テーマを設けること、1テーマにつき時間は5分に設定していることにも理由があると安井さんは話します。
「利用者は障害がある人も多いため、テーマが決まっている方が話しやすいという声が。長く話すのが苦手な人もいるため、短めにしているんです」。初めて参加する人にとっても、気楽に話せるという利点があるといいます。
取材に訪れた日の利用者は10人ほど。一つ目のテーマは「私が今悩んでいること」。
ある利用者は、家族関係がうまくいっていないと打ち明けていました。「それはつらいですね」と共感の言葉を返すスタッフ。時には、「〇〇というのは?」と話を掘り下げたり、「助けてくれる人はいますか」と問いかけたりも。指示やアドバイスは行いません。

「悩みを聴いてくれる人」「私の聴いてほしいこと」とテーマが変わるごとにペアも変わっていきますが、どのスタッフも真摯(しんし)に耳を傾けてくれるので、利用者は落ち着いて話ができているようでした。
次はフリートークの時間。ペアでテーマの話を続ける人もいれば、席を移動して複数でおしゃべりをする人も。テーマ以外に聞いてもらいたい内容があれば話すこともできます。最後は「また来てね」と、和やかにあいさつを交わして終了しました。
話をすることで生まれる気付き
代表の安井さんは今年87歳。長年、大手家電メーカーの社員として仕事に打ち込んできましたが、60歳で大病を患いました。それをきっかけに人生を見つめ直し、「人の役に立つことがしたい」と傾聴の勉強を始めたのだとか。
その後、京都で傾聴講座を開くとともに、高齢者施設やホスピスなどを訪れて傾聴活動を続けてきました。「施設の入居者や患者以外でも、話を聞いてもらいたい人たちはいる」と感じ、2022年に開いたのが「ほっとカフェ東山」です。

「仕事やプライベートでの人付き合いが少なく、孤独や不安、寂しさを抱えている人が訪れます。話を聞くことで『そばに私がいます。あなたに関心を持っています』と伝えたいのです」
約3年で利用者数は延べ1000人を越えたそう。今ではリピーターの数も増えました。「開催を楽しみにしている人も多く、心の支えになれているのでは。日ごろは人と話すことが少ない利用者も、和気あいあいとした時間を楽しんでほしい」と安井さん。

「傾聴において、聞き手はいわば相手を写す鏡。利用者は話をするうちに、自然と自分の中に気付きが生まれます。体が続く限りは、この活動を続けていきたいですね」
問い合わせは、代表・安井さん=TEL:075(602)7323=へ。
ほっとカフェ東山(予約不要)
- 開催日時:毎月第1・第3火曜日 午後1時30分〜3時30分
- 場所:やすらぎ・ふれあい館(東山区五条通大和大路東入ル5丁目 梅林町576-5)
- 参加費:100円(お茶・お菓子代) ※利用者多数の場合は順に案内
(2025年9月6日号より)
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