楽器を楽しむ人々 その理由は?

2025年6月27日 

リビング編集部

幅広い世代が楽しむ、楽器の演奏。1人で演奏したり、誰かと音を合わせたり。楽器の演奏を趣味にする読者を訪ね、始めたきっかけや続けている理由、その楽器ならではの魅力を聞きました。

〈撮影〉橋本正樹、深村英司ほか

サックス

曽和和代さん(長岡京市)

曽和(そわ)和代さん(70歳)がサックスと出合ったのは13年前。長年連れ添った夫が、2年間の闘病の末に亡くなって半年ほどのことでした。

愛用しているアルトサックスを持つ曽和さん

「仕事帰りにふらっと入った楽器屋さんで、サックスの美しいフォルムに目を奪われて。手に取って試すうちに、半年後の夫の一周忌にジャズを演奏しようと思いついたんです」

というのも、生前の夫が大のジャズ好きだったから。曽和さんはさっそく楽器店が運営する音楽教室に申し込み、レッスンをスタート。

「半年の練習ではジャズの演奏は難しかったのですが(笑)、一周忌には簡単なJポップの人気曲を演奏できました」

レッスンを始める前は気落ちしていた曽和さんですが、演奏仲間にも支えられて元気を取り戻していったそう。練習を重ねるうちに、アルトサックスのほか、ソプラノサックス、テナーサックスも所有するように。曲に応じて使い分けて楽しんでいます。

昨年からは、教室で知り合った仲間4人とアンサンブル編成での演奏活動も始めた曽和さん。「東京にいる孫が吹奏楽部でフルートを吹いているので、いずれは一緒に演奏してみたいです」

音楽教室主催のイベントでは、1800席以上あるホールで演奏することも

アイリッシュハープ

江森礼奈さん(北区)

北区北部の自然豊かな雲ケ畑地域に立つ、一軒の古民家。森林インストラクターである江森礼奈(れな)さん(38歳)が雲ケ畑で活動するときの拠点です。江森さんは活動時、上賀茂の自宅から高さ120cmほどの小ぶりなハープを持参して練習。弦をはじくと、ポロンポロンと心にやさしく染み渡るような音色が響きます。

ハープの演奏は主に軒先で。周囲に音色が響きます

ピアノ教師だった母のもと、さまざまな音楽に触れて育った江森さん。子どもの頃にコンサートでハープの音色を聴いて以来、憧れていたといいます。

「ただ、クラシック音楽用のグランドハープは高価な上、高さが180cm前後あって場所を取るので習うのは難しいかなと思っていたんです。ところが5年ほど前、小形でお手頃なアイリッシュハープの存在を知り、数カ月後には購入して弾き始めました」

アイリッシュハープは、アイルランドの伝統的な弦楽器。「通っている教室では、主にアイルランドや北欧の民謡を習っています。アイルランド民謡にはテンポの速いダンス曲が多く、弾くのが大変。一方、北欧の民謡には独特なリズムがあり、郷愁を感じさせる曲が多いように思います。そういった音楽にも、ハープのおかげで出合うことができました」

教室の発表会や演奏仲間とのコンサートのほか、森林でのイベントで演奏を披露することも。

「私があちこちで演奏することで、たくさんの人にアイリッシュハープの魅力を広めていけたら」

アイリッシュハープ には、弦の上部にレバーがあり、上げ下げすることでシャープやフラットの半音を調節できます

フルス

角井正博さん(伏見区)

待ち合わせ場所に現れた角井(かくい)正博さん(76歳)が手に持っているのは…、ひょうたん、それとも笛? 

「こちらは、中国南部の少数民族の楽器、フルスです。ひょうたんと竹で作られています」と角井さん。柔らかで深みのある独特の音色が特徴だとか。

中国の楽器店で買ったフルスを手にする角井さん

フルスと出合ったのは、仕事で中国福建省に赴任していた50代の頃。「休日に出かけた桂林(けいりん)という観光都市の土産物店で、フルスのユニークな形状に目を留めたのがきっかけです。大学時代から練習していた尺八の基礎がある自分なら演奏できそうだと思い、買って試すことに」

後日楽器店で、より本格的なフルスも入手。「赴任中は、時間を見つけて練習したり、楽器店で奏法を教わったりしました。帰国後は本や動画を参考にしています」

フルスはリコーダーのように息を吹き込み、穴をふさぐだけですぐに音が出るため、比較的演奏しやすい楽器なのだとか。

フルスの演奏などを通してできた縁がきっかけで、イベントや市民サークルの交流会にも奏者として参加するように。

「楽しいと感じることを続けていれば友人が増えて世界が広がり、人生が豊かになります。同じように感じる人が、増えて欲しいですね」

尺八は習得が難しいといわれる楽器の一つ。角井さんは音が出るまでに1週間、曲を演奏できるようになるまでに1年ほどかかったそう
角井さんが初めて買った土産物のフルス

三味線

安田小百合さん、澄香さん(長岡京市)

週に1回、民謡教室で親子一緒に三味線と唄を習っているという安田小百合さん(58歳)と澄香(すみか)さん(33歳)。母親の小百合さんは約40年、娘の澄香さんは約20年の演奏歴があります。

左から、安田澄香さん、小百合さん。「いつでも連弾できるのは、一緒に住んでいるからこそのメリット」(澄香さん)

小百合さんは、「10代の頃から演芸が大好きでした。落語を見に行ったときに出ばやしの音に魅了されたことが、三味線を習い始めたきっかけです」と話します。

一方の澄香さんは、「私は幼少期から母が通う教室についていく機会が多く、自然と民謡に親しんで育ちました。小学生のとき、まず唄を習い始めたのですが、教室で耳にした三味線の音の力強さに感動して、三味線も始めることに」

弦が3本しかない三味線は難易度の高い楽器で、曲によっては弾けるようになるまでに数年かかることもあるのだとか。

「音の奥行きを出すのも難しく、続ければ続けるほど新しい課題が出てきます。その分、難しい曲や奏法を習得できたときには達成感があります」(小百合さん)

「以前野外のステージで発表したときに、幅広い世代の人が立ち止まって聞いてくれたり、民謡を知っている年配の人が一緒に歌ってくれたり。そういった反応をしてもらえたときにやっていて良かったと感じます」(澄香さん)

親子で滋賀県の民謡「淡海節」の大会「びわ湖大津淡海節全国大会」に出場したときの一場面。このときは、澄香さん(右)が歌手、小百合さん(左)が伴奏者として参加しました

読者に自分または周囲が習っている楽器についてアンケート(※)を取ったところ、ピアノ、エレクトーンがダントツで1位に。2位以降がギター、フルート、バイオリン、トランペットの順でした。40代・50代では和太鼓やドラムが、70代以上では、オカリナや琴も人気なよう。

練習場所は、自宅や教室に加え、公民館や鴨川河川敷など。サークルや吹奏楽団に入っている人もいました。

楽器を始めたきっかけは、子どもは親の勧めなどが多く、大人の場合は、昔からの憧れや、友達の誘いなど。練習するうちに上達を実感したり、好きな曲が弾けるようになったり。仲間と合奏できることにも魅力を感じているようです。

※2025年4月にリビング読者にアンケート。有効回答数309

●憧れのフルートに挑戦

子どもの頃、憧れだったフルート。当時は習うことができなかったのですが、大人になっても忘れられなくて、50代になって始めました。まだ上手には吹けませんが、よい音が出たり、できなかったことができるようになったりするのが楽しいです(55歳・女性)

●ギターで生活に張りが

アコースティックギターをコロナ禍から習い始めました。休日の朝などのゆっくりできる時間に練習しています。この年齢になっても上達を目指して練習するものがあると、生活に張りが生まれると感じています(51歳・女性)

●ピアノとフルートがいつもそばに

約40年間、ピアノとフルートを演奏。教室で指導もしています。うれしいときも悲しいときも、音楽はいつも寄り添って、心を満たしてくれます(56歳・女性)

●和太鼓を始めたきっかけは子の運動会

30年以上前、子の運動会で保護者が和太鼓を披露するという種目が。運動会に向けて練習したことが、和太鼓を始めたきっかけでした。現在は月に2回、サークル活動に参加して、地域の祭りなどで披露しています。和太鼓は、全身を使って楽しめるのが魅力です(66歳・女性)

●家族会議でトランペットの練習をスタート

小学4年生の時に「なにか楽器を習ってみたい」と言い出した長男。どんな楽器をさせるか家族会議を行い、近くに教室があること、本人が向いてそうなことなどを考えて、トランペットを始めました。中学校では吹奏楽部に入部。得意なトランペットを生かせる場にいれてうれしそうです(41歳・女性)

(2025年6月28日号より)