おいしさを引き出す蒸し料理

2025年6月6日 

リビング編集部

「せいろ」のブームとともに注目されている、蒸し料理。その魅力、おすすめのレシピと調理のコツを、管理栄養士や専門店の料理長に教えてもらいました。

写真/桂伸也、鈴木誠一

効率よく栄養を取れるのでバテやすい夏にもおすすめ

「蒸し料理は、ゆでる調理と比べて食材の栄養が流出しにくいのが特徴です。蒸すことで魚介類やアブラナ科の野菜のアミノ酸、ブロッコリーやキャベツのビタミン・食物繊維が増えるという研究結果があり、効率よく栄養を取ることができます」

そう話すのは、管理栄養士で、伏見区の料理教室「あなたのすみれsmile」主宰のいとうまりさん。

甘みといった、食材本来のおいしさが際立つので、調味料を減らせるというメリットも。減塩など、健康を意識している人にもおすすめの調理法なのだとか。

「夏は、暑さでバテたり、つい冷たいものを食べすぎて内臓を冷やしたりしがち。体をいたわりたいときにもおすすめです。せいろがない場合も、フライパンや鍋、電子レンジでも作ることができるので、まずは気軽に試してみて」

今回は4品のレシピを紹介。教えてくれたのは、いとうさん、そして蒸し料理専門店「蒸とアテ ふうふう 京都駅前店」の料理長・伊谷望さんです。

蒸しアジと夏野菜の梅風味

野菜のうまみを生かすことで、夏魚をシンプルに味わえます

旬のアジを、さっぱりとした梅ダレで。クッキングシートで包んだ食材を浅めの鍋で蒸せば、簡単にメインの一品ができあがります。身もふっくらと仕上がりますよ。

「ポイントは、一緒に蒸す野菜。タマネギの甘み、シメジのうまみを生かすことで、シンプルな味付けでも満足感が生まれます」と、いとうさん。

セロリによってアジの臭みも抑えられるとか。

【材料 2人分】 ※写真は1人分

  • アジ1匹(半身2枚分。骨を取り除いておく。切り身で代用可)
  • タマネギ1/2個
  • シメジ1/2パック
  • ニンジン1cm
  • セロリ10cm(ネギで代用可)
  • ズッキーニ6cm
  • 昆布2枚(5cm角)
  • サラダ油小さじ1
  • 料理酒大さじ2
  • 塩ひとつまみ
  • 梅干し2個
  • シソ6枚
  • A(煮切りみりん大さじ1、だし大さじ2)

【作り方】

①タマネギを薄切りにする。

②シメジは小房に分ける。ニンジンを花形にくり抜いて下ゆでする。セロリは筋を取り除いて斜め薄切りに。ズッキーニは輪切りにし、フライパンにサラダ油をひいて、強火で焼く

③クッキングシートに1人分ずつ包む。シートに昆布、❶を敷き、その上にアジの半身を乗せる。❷の野菜を並べ、料理酒、塩を振り、クッキングシートの両端をねじって包む

④浅い鍋(フライパンでもよい)に❸を置き、底から1cmくらい水を張る。ふたをして火にかけ、15分ほど蒸す ※蒸し方のコツは下記参照

写真は1人分。2人分の包みを一緒に蒸してもOK

⑤梅ダレを作る。梅干しの種を取り除いて果肉をたたく。A、千切りにしたシソと混ぜ合わせる

⑥蒸し上がったら❹を皿に移し、野菜を彩りよく盛り付けて❺をかける

蒸すときのコツ

魚は「強火で短時間」が基本。水が沸騰するまでは強火にかけ、湯気が出始めたら中火を維持して。蒸気で素早く加熱でき、身が固まりにくくなります

蒸しナスとトマトの和えもの

とろっとした食感と清涼感が魅力

「ナスは蒸すととろっとした食感になり、甘みが増します」(いとうさん)

トマトと和えて冷やし、ミョウガと新ショウガを添えると、清涼感のある副菜に。

「冷やすと味がなじむため、作り置きのおかずにもぴったり。ごま油の代わりにオリーブオイルを加えれば、イタリアン風にアレンジできますよ」

【材料 2人分】 ※写真は1人分

  • ナス2本
  • ミディトマト2個
  • ミョウガ1/2個
  • 新ショウガ20g
  • ごま油大さじ2
  • 塩ひとつまみ

【作り方】

①鍋にたっぷりの水を入れ沸かしておく

②ナスはヘタを残して皮をむく。せいろの中に入れ、10〜15分ほど蒸す

ヘタを残しておくことで、盛り付けた時に見栄えがよくなります

③トマトを食べやすい大きさに切る

④ミョウガと新ショウガを千切りにする

⑤❷を輪切りにし、❸とごま油、塩を加えて和える。冷蔵庫で10分ほど冷やす

⑥皿に盛り付け、❹を飾る

※せいろの代わりに、電子レンジで蒸してもよい。耐熱容器にナスと少量の水を入れてラップをかけて温める

蒸すときのコツ

断面が多いとうまみが流失しやすくなるため、丸ごと蒸すのがおすすめ。厚みのある部分を竹串で刺し、すっと入れば中まで火が通っています

教えてくれたのは

管理栄養士
「あなたのすみれsmile」主宰
いとうまりさん

シュウマイや焼き魚などの買ってきた総菜を温め直すとき、蒸し器を使うとふっくら仕上がっておいしいですよ。新たな調理方法として試してみては

九条ネギソースでいただくよだれ鶏蒸し

ごはんやお酒が進むジューシーなお肉

「中華料理の冷菜であるよだれ鶏を、蒸し料理にアレンジしてみました」と、伊谷さん。鶏むね肉を調理液に漬ける一手間によって、蒸したときに柔らかくジューシーになるのだとか。九条ネギをたっぷり使った特製ソースとも好相性で、ご飯やお酒が進みそう。

「食卓に出すときはせいろごと。食べる直前にソースをかけてふたをしておくと、開けたときに食欲をそそる香りが広がります」

【材料 1人分】

  • 鶏むね肉(皮は除く)150g
  • モヤシ50g(せいろのサイズや好みで)
  • 塩少々
  • コショウ少々
  • A(水1ℓ、塩大さじ2、砂糖大さじ1/3)
  • B(九条ネギのみじん切り1本分、しょうゆ大さじ5、うま味調味料小さじ1、米酢大さじ2、ごま油大さじ2、トウバンジャン小さじ1)

【作り方】

①ポリ袋にAを入れて混ぜ、調理液を作る。鶏むね肉を加え、冷蔵庫で3時間以上寝かせる

②鍋にたっぷりと水を入れ、沸かしておく

③せいろの中に耐熱皿を置き、モヤシを敷き詰めて塩、コショウを振る

④❶から肉を取り出して水気を取り、一口サイズにカット。❸のモヤシの上に、肉を並べる

肉同士がくっつかないように並べます

⑤せいろにふたをし、❷の上に設置する。8分蒸す。6分ほどは、ふたを開けずに蒸して。その後、火の通りを確認して蒸し時間の調整を

⑥Bを混ぜ合わせてソースを作る

⑦蒸し上がったら❻を回しかける

※しょうゆの代わりに中国しょうゆを使うと、味に深みが出る
※鍋よりせいろが小さい場合は、蒸し網を使い、その上に設置を
※ソースは作りやすい量。残りはごはんにかけてもおいしい

蒸すときのコツ

せいろ蒸しは、蒸気を絶やさないことが大切。空炊きしないよう、多めにお湯を用意しましょう。一度沸騰させた後は、ぐつぐつさせないよう弱〜中火を維持して

せいろで作る蒸しプリン

なめらかな舌触りのスイーツ

「蒸しプリンは卵黄と砂糖をしっかり混ぜておくことで、なめらかな舌触りになります」(伊谷さん)

蒸すときはラップをしますが、昔ながらの固めのプリンが好きな人は、ラップなしで蒸してみて。卵の風味が強く仕上がるそう。

「冷めたらトッピングで楽しんでもいいですね。ホイップクリームやカラメルソースのほか、甘みが濃く水気の少ない、イチゴジャムなども合いますよ」

【材料 4人分】 ※写真は2人分

  • 牛乳150ml
  • 生クリーム150ml
  • 卵3個(卵黄と卵白を分けておく)
  • 砂糖(大さじ4と1/2)
  • バニラエッセンス数滴

【作り方】

①鍋に牛乳と生クリームを入れ、沸騰しないように60度まで加熱する

②別の鍋で多めにお湯を沸かしておく

③ボウルに卵黄と砂糖を入れ、ダマがなくなるまで泡立て器でよく混ぜる。卵白とバニラエッセンスを加えてさらに混ぜる

④❸に❶を少しずつ加えながら、泡立てないようにやさしく混ぜる

⑤深めの耐熱皿に、1人分ずつ❹を流し入れる。皿にラップをかけ、4カ所に箸などで小な穴を開ける

⑥❺をせいろの中に置き、ふたをして❷の上に設置する。10分ほど蒸す

※粗熱をとった後に、冷蔵庫で冷やしてもおいしい

蒸すときのコツ

蒸す前に、プリン液の表面をバーナーなどであぶって気泡を消しておくときれいに仕上がります

教えてくれたのは

「蒸とアテ ふうふう 京都駅前店」
料理長
伊谷望さん

火加減の調整が簡単で、加熱中に放っておけるのが蒸し料理の利点。忙しい人も作りやすいと思うので、簡単な料理からチャレンジしてみて

(2025年6月7日号より)