病気の予防に向けて、知って、行動!

予防のために、自分でできること

では、私たちは病気予防のために、何から始めたらいいのでしょう。そのヒントやポイントを、京都予防医学センターの皆さんに聞きました。

京都予防医学センター
(左から)保健師・吉田和弘さん、健康運動指導士・門間萌子さん、保健師・西村久美子さん

京都府立医科大学分子標的癌予防医学 特任教授、「日本がん予防学会」理事長、「予防医療普及協会」顧問石川秀樹さん

体重を健康づくりの一助に

「おすすめは体重記録です」と西村さん。毎日、朝と晩に計った体重を記録するというシンプルな方法です。食生活や運動習慣の見直しができ、肥満対策が生活習慣病予防につながります。 「体重は基本的に、朝が一番軽く、夜が重くなるもの。自分の食事や運動した結果が、数値として表れます。もし、その日の朝の体重が前日の朝より増減していれば、前日に何をどれだけ食べたか、どれくらい動いたかなどを振り返ってみましょう」 続けていけば自分の体重の推移から、増えやすい食事の量や内容、減りやすい活動量などを知る手がかりに。体重が増加傾向なら、減少したときの生活を心がけるなど、自分に合った体重のコントロール方法が見つけられるそうですよ。

「健診」と「検診」、違いを知って上手に活用

「健診(健康診断)」は、その人が今健康か、将来健康を損なうようなリスクがないかをチェックするもの。 「体重記録と同じように、自分の1年間の生活習慣と健康との関わりを数値として確認できます。健康づくりに取り組んできた成果を知る通知票ともいえますね」(吉田さん)

チェック時は、経年で変化を見るのもポイント。健診結果が良好、または改善されていたら、今の生活スタイルをキープ。数値が良いときの体重を、自分の目標値にしてもいいそうです。
「数値に問題がなくても、以前より悪化傾向にあるなら生活を見直しましょう」

一方、「検診」は病気を早期に発見し、治療することが目的。がん検診などが、これにあたります。「異常が見つかった場合は、速やかに医療機関を受診しましょう」

〝3本柱〟の基本も忘れずに

「健康な成人の場合、1日分の食事量は炭水化物は毎食(※)、魚や肉などのタンパク質は両手にのるくらい、野菜類はたっぷりが目安です。タンパク質が不足すると代謝や筋肉が落ち、かえって太りやすくなることも。日中に活動するなら、エネルギーとなる炭水化物も必ず取りましょう。過度なダイエット、特定の食品や栄養素などを制限する食生活も要注意です」(西村さん)
※ごはん茶わん1杯

運動

「健康づくりに必要な活動量は1日8000歩、速歩きや階段を上るといった中強度の運動を1日に合計20分。5分から10分の筋トレもプラスするとより効果的です」と教えてくれたのは、同センターの健康運動指導士・門間萌子さん。
「高齢期の転倒を予防するには、スクワットや腹筋などで脚と体幹部分を鍛えるのがポイント。ちょっとした空き時間に、つま先立ち、かかとの上げ下げなどを行うのもおすすめです。自分が打ち込める趣味や楽しみ、仲間をつくっておくと、外出の機会が増えて運動量もアップ。活動的な生活スタイルは健康づくりにもつながります」

生活習慣

「睡眠が不足したり、質が悪いと、疲労回復や筋肉の再生を促す成長ホルモンや、食欲を抑制するホルモンの分泌が低下。日中の活動量も減少して太りやすくなるといった悪循環を招きます。日中にきちんと食事を取り、しっかり活動するサイクルができてこそ、一定の時間に眠くなり、質の良い睡眠が得られます」(吉田さん)

医者の立場からアドバイス

梶山内科クリニック院長、京都府立医科大学客員講師、「日本糖尿病学会」学術評議員 梶山靜夫さん

梶山内科クリニック院長、京都府立医科大学客員講師、「日本糖尿病学会」学術評議員
梶山靜夫さん

Data are means ±SD.Rice first vs. Vege first ** p<0.01. 今井佐恵子,梶山静夫.福井道明ほか. 糖尿病 53:112-115.2010

Data are means ±SD.Rice first vs. Vege first * p<0.05.Rice first vs. Vege first **p<0.01. 今井佐恵子,梶山静夫,福井道明ほか. 糖尿病 53:112-115.2010

〝食べ順〟を意識して、
病気や肥満を予防

まず野菜を食べて、おかず、ごはんへ─。糖尿病の治療のため、約15年前から「食べ順」療法(食べる順番療法)を研究、提唱している梶山内科クリニックの院長・梶山靜夫さん。その臨床データなどから、他の病気の予防や健康寿命の延長にも有効であることが分かってきたそう。

「心筋梗塞や脳梗塞をはじめとする動脈硬化症、生活習慣病やがん、アルツハイマー型認知症などは、血糖値の急激な上昇や変動と過剰なインスリン分泌が原因の一つであることが明らかになっています」

特に血糖値の急上昇を招くのが食後。炭水化物は血糖値を上げやすいため、最初に野菜を食べることで食物繊維が糖分の吸収を抑制して、血糖値の変動が緩やかになるのだそうです。

早食いすると効果がありません。ゆっくりよくかんで食べましょう。満腹感を得やすくなるので、肥満の予防・解消にもつながりますよ」

検診は、予防にもつながります

1面でも登場の、大腸がんの予防医療を推進する石川秀樹さんによると「大腸がんになるリスクを軽減するのが、運動」とのこと。「中でも有効と考えられるのが、腹部を揺さぶるような動きを伴うもの。テニスやダンスといった比較的激しめのスポーツなどがおすすめです」
一方、過度の飲酒、喫煙、野菜の極端な不足、加工肉や牛肉・豚肉の食べ過ぎなどは、リスクを高めることが指摘されているそう。
「大腸がんのほとんどは、ポリープ(腺腫)が〝がん化〟して発症します。その手前でポリープを除去すれば、大腸がんの予防につながるんです」
そのためにも、「大腸がん検診」で異常が見つかったら内視鏡検査を受けることが重要だそう。

朝のラジオ体操が社員の〝気づき〟に

オフィスでラジオ体操を行う皆さん。「体が動きやすくなり、気分もしゃきっとします」「デスクワーク中も体をほぐすよう意識するようになりました」

始業時間の5分前になると、フロアに従業員が集合。パッケージメーカー「パックス・サワダ」では、全員でラジオ体操を行うのが日課です。

「よい仕事、充実した人生につなげるためにも心身共に健康であってほしい」と話す代表取締役社長の澤田守成(もりしげ)さん。

同社では従業員のアイデアを採用し、毎週2回のノー残業デー、月1回のノーカーデーなども実施。これらの取り組みが評価され、京都府が認定する「きょうと健康づくり実践企業」の「平成28年度最優秀賞」を受賞しています。

「本人が自分の健康について自覚し、健康づくりを実践していく〝気づき〟になれば。会社の活動をきっかけに、ジムに通ったり、自転車通勤を始めたという声を聞くと、とてもうれしいですね」

〝やる気〟をサポートする取り組みも

京都市が配布する「いきいきポイント手帳」

〝やる気〟をサポートする取り組みも

健診・検診の受診、健康づくりに関わる運動やイベントの参加などで、健康づくりをサポートする事業も。
京都市が実施している健康長寿のための取り組みの一つ、〝いきいきポイント〟にも注目を。健康のために行った行動を健康ポイントとし、手帳に記入。50ポイントたまると、自転車や人間ドックの受診券などのプレゼントに応募できますよ。

このページのトップへ