ホーム > > 試写室・劇場から

試写室・劇場から

黄金のアデーレ 名画の帰還

11月27日(金)からTOHOシネマズ二条、MOVIX京都で公開

©THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION
/ ORIGIN PICTURES(WOMAN IN GOLD)LIMITED 2015

奪われた一枚の絵をめぐる闘いの道のりと奇跡の結末

グスタフ・クリムトが描いた「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」は、世界で最も高額な絵画の一つといわれている。ウィーンに住んでいた裕福なユダヤ人一家が所有していたものだが、第二次大戦中にナチスによって没収され、その後長くウィーンの美術館に所蔵されていた。この名画に描かれたアデーレの姪(めい)に当たるマリアが、82歳でオーストリア政府を相手に裁判を起こしたという実話を映画化したものである。

遠い昔にウィーンを離れ、アメリカで暮らすマリアは、名画を取り戻すために友人の息子である若き弁護士ランディに話をもちかける。だが、彼らの前にはさまざまな障害が立ちふさがる。世界的にも有名な絵画を、オーストリアがそう簡単に手放すわけがないのだ。紆余(うよ)曲折ありながら、裁判へと進むのだが、映画ではマリアの過去の思い出が随所にはさみ込まれ、こっちのほうも見応えがある。華やかな生活から一転、父母を置いての亡命…。再びウィーンを訪れたマリアによみがえってくる悲しみや怒りを、名優ヘレン・ミレンが繊細に体現した。マリアの真のこころざしと、名画のその後も感動的だ。ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュールほか共演。「マリリン 7日間の恋」のサイモン・カーティスが監督。

(ライター 宮田彩未 

このページのトップへ