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インタビュー

俳優 渡辺えりさん

1955年、山形県生まれ。女優・劇作家・演出家として活躍、岸田戯曲賞、紀伊国屋演劇賞個人賞など多数受賞。
7月7日(火)~23日(木)、京都南座で「喜劇 有頂天旅館」に出演。
一等席1万1000円ほか。チケットの問い合わせは0570-000-489、チケットホン松竹へ

還暦に南座で初主演とは、感慨深いものがありますね

8年前、美輪明宏さんのアドバイスにより、それまでの「渡辺えり子」から改名した、渡辺えりさん。それが新たなパワーとなってか、還暦を迎えたこの夏は、南座で「喜劇 有頂天旅館」の主役にチャレンジ、ますますの活躍が期待されます。女優のほかに、劇作家、演出家、エッセイストと多彩な顔を持つ渡辺さんですが、実は京都に意外な縁があるようです。



「子供のころ、レコードで覚えた歌を、みんなの前で披露すると、これが好評でね。それで調子に乗っちゃったところがあるんですけど(笑)。それから『赤い靴』というバレリーナが主演の映画を見て、今度はバレリーナに憧れまして。また、宮沢賢治や高村光太郎が好きだった父親の影響で、詩の朗読が好きになったり…」

幼いころから、すでに芸事に強い関心を抱いていた渡辺さんの、演劇への道を決定的にしたのは、16歳のときのある出来事。

「地元の山形市で『ガラスの動物園』というお芝居を見て、客席から立ち上がれないほどの衝撃を受けました。それで、終演後、演出をしていらした女優の長岡輝子さんの楽屋を、無謀にもアポなしで訪ねたんです。『芝居の道に進みたいけれど、大学(できれば京都大学)にも入りたい。どうしたらいいでしょう』って聞きに。すると長岡さんは『役者に学歴はいりません。すぐに上京してお芝居の勉強をなさい』って言ってくださったんです」

演劇界の大御所といわれる長岡さんの、このアドバイスが後押しとなって、高校卒業後、両親の心配を振り切って上京。舞台芸術学院で学び、やがて「劇団300(さんじゅうまる)」を主宰。劇団解散後も「渡辺塾」を開き、俳優志望の若者たちの指導にあたっています。

「昔から、芝居をやる若者は貧乏でしたけど、今はもっと貧乏です。でも、彼らに言うんですよ。『夢を実現させるためには、とにかく真剣に、死ぬ気でやってくれ!』って」

これは、次世代へ寄せる期待であり、同時に経験と年齢を重ね、さらに輝くための、渡辺さん自身へのエールなのかもしれません。

初演は山田五十鈴さん。古風な美人を演じます

渡辺さんの父方の祖父が、かつては京都のお寺の住職で、映画の成功祈願のおはらいなどにも尽力したとか。その京都で、この夏、南座に初出演で主演。演目は、琵琶湖のほとりの古い料理旅館で繰り広げられる大騒動に、人間の業をほろ苦く織り込んだ、北條秀司の名作をもとにした「喜劇 有頂天旅館」。

「よく足を運んだ南座ですが、出演するのは初めて。私が演じるおかみの役は、もと大津芸者で古風な美人(笑)、働く女性の原点ともいえる役柄。共演のキムラ緑子さんとは、体当たりの死闘を演じることなりそうです。実は、初演では山田五十鈴さんが演じていらっしゃったんです。私も、南座でそんな役を演じられる年になったとは、感慨深いものがありますね」

5月31日(日)から東京・花巻・山形で行われる還暦コンサートでは、「これまで私を支えてくださったスタッフやお客さまに、心からの“ありがとう”の気持ちを込めて、歌いたいと思っています」。

(文・あさかよしこ 

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