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試写室・劇場から

光にふれる

2月8日(土)から京都シネマで公開

©2012 Block 2 Pictures Inc. All rights reserved.

闇の世界で生きるピアニスト、その心にあふれる光をつづる

先日、台湾の若きピアニスト、ホアン・ユィシアンの生演奏にふれる機会を頂いた。彼は、生まれた時の疾患により両目の視力を失っている。だが、その音は、聴く者の耳に温かな光を射し込ませた。そして、心に日だまりを持つ人の穏やかさを感じさせるものだった。その彼が主演し、名匠ウォン・カーウァイによって才能を認められたチャン・ロンジー監督がメガホンを取った本作は、冬の寒さを忘れさせるような映像の逸品だ。

幼いころからピアノ演奏で力を発揮してきたが、ある事件がきっかけでコンクールを避けているユィシアン。母親の心配をよそに、台北の大学に進んで寮生活を始めるが、さまざまなトラブルが彼を待ち構えていた。そんな彼の日々に、ダンサーを夢みる少女の青春が交差していく…。

二つの青春の光と影。主人公の日常を生き生きと、ユーモアも交えながら描き、恋人同士とは呼べない少女との微妙な距離感がほほえましい。ユィシアンの自然体ともいえる演技や、あどけなさを残すその表情に魅せられてしまう。彼自身による音楽も素晴らしいし、詩情あふれる映像のタッチにもひかれた。平凡なサクセスストーリーの枠を超えながら、希望のともしびを掲げている。サンドリーナ・ピンナ、リー・リエが共演。

(ライター 宮田彩未 

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