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試写室・劇場から

クロワッサンで朝食を

8月24日(土)から京都シネマで公開

©TS Productions-Amrion Oū-La Parti Production-2012

孤独と孤独が寄り添いあって、人生が再び輝きを放つ時

決して美談っぽくないのに、ええ話やなあと心を揺さぶられる映画がこれ。詩情に満ちたパリの街を、普通の人が暮らす生活空間として背後に映しつつ、年齢も歩んできた道も異なる2人の女性のふれあいを、時にユーモアもこめて描く。

エストニアの田舎町に暮らすアンヌは、離婚、子どもたちの独立、介護をしてきた母の死でひとりぼっちになり、ぼうぜん自失状態にあった。そんな折、パリに住むエストニア出身の老婦人フリーダが身の回りの世話人を探しているという電話が入る。昔からあこがれてきたパリへ、思い切って足を運ぶアンヌだったけれど…。

フランス映画界屈指の名優ジャンヌ・モローと、エストニア出身のライネ・マギが、まるで母娘のような間柄になっていく2人の女性を印象深く演じている。でも、出会いの当初はすったもんだの大騒動。フリーダは気難しく意地悪で、題名にもあるように、アンヌがスーパーで買ってきたクロワッサンを、「こんな偽物!」と口をつけてもくれない。フリーダの過去が少しずつ明かされ、意外な愛人がアンヌとフリーダの緩和剤ともなって、物語は柔らかさを帯びてくる。愛情に満ちたカメラの力を感じるのは、監督イルマル・ラーグ自身の母親の実話をもとに映画化されたからか。

(ライター 宮田彩未 

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