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試写室・劇場から

クレアモントホテル

2月26日(土)から京都シネマで公開

©2005 Claremont Films,LLC

世代を超えた友情の秘密は、凛(りん)とした生き方なのね

映画を見終わった後、町に出る。すると、いつもの風景が、どこか違って見える。映画の中の人物が、しばらく自分のそばにいて離れない。これはそういう作品の一つ。胸にともされた明かりの、しみじみとした温かさにうれしくなった。

夫に先立たれ、意見の合わない娘から自立しようと、ロンドンにある長期滞在型の『クレアモントホテル』にやって来たサラ。期待はずれのホテルだったが、そこにはそれぞれに孤独を抱える人たちが住みついていて、彼女を優しく迎えてくれた。ある日、道端で転んだサラは、小説家志望の美青年ルードに助けられ、親交を深めるが…。

ええ人がいっぱい出てくるええ話、なのかもしれないが、最近の暗い世相の中、人生も捨てたもんじゃないと感じさせてくれるこういうストーリーもいいなと思う。サラのような老後は、数少ない奇跡だろうけれど。

老いても、ロマンチックで前向きなサラを演じたジョーン・プロウライトの確かな存在感に圧倒され、好青年ぶりで押してくるルパート・フレンドには乙女心(?)がさわぐ。監督のダン・アイアランドは、自ら映画館運営にかかわってきた人で、名画へのオマージュも随所に。ワーズワースやブレイクの詩も、物語のエッセンスとして巧妙に使われている文芸作。

(ライター 宮田彩未

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