試写室・劇場から｜ミュージカル「ウィキッド」

撮影者：荒井健

ファンタジーに包まれた、シリアスな視点が快感！

「ウィキッド」とは“邪悪な”という意味をもつ言葉。名作「オズの魔法使い」に登場する悪い魔女が、なぜ悪い魔女と呼ばれることになったのか、という視点から描いたのがこのミュージカルである。まず驚かされるのは、その舞台装置の不可思議な華麗（？）さ。

平和な国・オズに、このところ不穏な異変が起こり始めている。その国にあるシズ大学に、不思議な魔法の力をもった少女・エルファバが入学してきた。生まれながらに緑色の肌をした彼女は、父親にも同級生たちにも疎まれ、さらに同室となった人気者の美少女・グリンダとも衝突してしまうが、二人は次第に友情をはぐくむようになっていく。ある日、エルファバのもとへ、あこがれのオズの魔法使いから招待状が届き、エルファバはグリンダを伴いエメラルド・シティへ。しかし二人は、ここで驚くべき事実を知ることになる。

ストーリーの紹介だけでは、この作品のスケール感や奥深さを伝えきれないことがジレったい。紛れもなく夢々しいファンタジーなのだけれど、現実の社会や人間サマをチクチクとやゆしながら、愛とは、平和とは、そして“悪”の定義とは…というメッセージや問いかけが、極上の隠し味になっているこしゃくな逸品！　

（ライター あさかよしこ　 ）